キリスト教あれこれ(1)

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パッション

 キリストの受難を描いたメル・ギブソン監督の「パッション」という映画ある。パッション (2004年の映画) – Wikipedia

「パッション」が取り上げるのはキリストの生涯最後の12時間である。ギブソン監督は4つの福音書(マタイによる福音書、マルコによる福音書、ルカによる福音書、ヨハネによる福音書)にちりばめられたこの12時間の劇的な場面を忠実に描いている。そこではゲッセマネの園から連行されるイエスが殴られ片目がつぶされている。拷問を受け、鞭打たれ、十字架を背負って刑場であるゴルゴダの丘を這い上がり、くぎで手足を十字架に打ち付けられる磔刑の描写は凄惨極まりない。
 確かに、キリスト者にとって、イエスの受難は信仰の要である。試写を見た法王ヨハネ・パウロ2世は「きわめて正確だ」と個人的感想としてコメントしたそうだし、プロテスタントの伝道師ビリー・グラハムは感動のあまり涙したと伝えられている。また映画の中でキリストを演じたジム・カビーゼルは「ギブソンは受難について瞑想し、キリストの傷に自分の傷を癒されたと語った。」と述べている。その一方で、誰がキリストを殺したかをめぐる古くからの根深い論争を蒸し返したとか、反ユダヤ主義であるとか、ギブソン監督は超保守派のカトリック教徒で第二バチカン公会議で決議された改革の多くを受け入れないとか、歴史的にみるとこの映画には多々疑問や誇張があるとか、等々、当時は賛否両論、いろいろと話題になった。

 ところでこの映画のタイトル「パッション」、英語の辞書を引くと、「熱情」「激情」「熱心」「熱望」「興奮」などとあるが、ここでは断じてその意味ではない。「パッション」(passion)には他に「受難」「受苦」「受動」「悲哀」などの意味もある。特に”The Passion”といえば「キリストの受難」を意味する。Passion Musicは「キリストの受難曲」、Passion Playは「キリストの受難劇」のことである。また、復活祭(イースター)前の1週間をPassion Week(受難週)という。

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