博物館
イスタンブールには美術館・博物館が合わせて10数館ある。国立イスタンブール考古学博物館はギリシャ・ローマ時代のコレクションでは世界的に評価が高い。そこにはアレキサンダー大王の石棺(と呼ばれている)がある。考古学的には紀元前305年ころに制作され、1887年にレバノン領シドンで発見されたネクロポリスの石棺の一つである。にもかかわらず、大王の石棺と言われるのはその彫刻の題材の故である。そこにはマケドニアとギリシャの戦闘場面、ライオンや鹿狩りの場面が描かれており、ライオンの皮を頭からかぶり、あるいは馬に乗って疾走するのは大王その人だからである。
古代東方博物館。ここには古代メソポタミア、イラク、シリア、ヨルダンなどからの出土品でいっぱいである。古代中近東世界の考古学に興味を持つ筆者には、ここでの一日はあっという間に終わってしまった。
それに加えて是非、見学を勧めたいのは、軍事博物館である。モンゴル軍より残虐を極めたとヨーロッパ人に恐れられたオスマントルコの軍隊、戦争に関する資料が展示されている。そこにはオスマン帝国の強さを見る思いがする。毎日午後1時から4時の間複数回、オスマン時代の軍楽隊の演奏が当時の服装で演奏される。1回20分くらいで15分の休憩を挟んで2回目が始まる。その楽曲は西洋音楽ともアジアのものとも異なる。これを耳にしたヨーロッパの人々はさぞかし「騒がしいドラ、やかましいシンバル」と聞こえたことだろう。
博物館好き必見!国立イスタンブール考古学博物館 – トルコのとりこ | トルコ専門WEBサイト (torukonotoriko.com)
トルコ軍事博物館の行き方,営業時間,入場料,軍楽隊の演奏場所,観光の仕方を紹介! – On the way to be a tourist |Masaの旅行記 (beaworldtourist.com)
カパルチャルシュ
イスタンブールを発つ前に、観光客が必ず立ち寄るのがトルコ語で「カパルチャルシュ」(屋根付き市場)と呼ばれるグランド・バザールである。石造りの屋内にある商店街であり、最も古い部分は中心部にあるベデステンである。アンティーク屋や金銀細工店が密集している。金銀細工以外は決して安くない。ターコイズ・ブルーのトルコ石は有名だが、それとて全てイラン産である。しかし革製品や紅茶のカップやポット、テーブルクロス、「シャル」と呼ばれる大型ショールなどは比較的安い。しかし粗悪品に要注意。また、値段の交渉は中近東の他の国と同様、必要である。
トルコ人の生活と密接な関係をもっているのが絨毯である。ある日、通訳のフィリアさんに絨毯工房に連れて行ってもらった。材料は羊毛(ウール)と絹であり、非常に高い技術と芸術性を持っている。工房の隣では絨毯を売っている。私には二つの目的があった。一つはヘレケ村の少女たちが織った絹の絨毯を見ることだ。「ヘレケ絨毯」といえば世界中のコレクターが目の色を変えるという逸品なのである。もう一つはラクダの毛で織った絨毯を買うことであった。私は絨毯についてはほとんど知識を持たない。そこでイスタンブール到着の時からフィリアさんにこの日のために色々調べてもらい、買う時には値段交渉の落としどころを合図してもらう手はずになっていた。店に入ると、まず紅茶を勧められ、すぐに流暢な日本語を話す店員が出てきて世間話から始める。その会話の中で相手の好み、絨毯についての見識、値段などに探りを入れているらしい。買い手の納得のいくよう何枚でも広げて見せてくれる。その間、紅茶を何杯でも持ってきてくれる。頃合いを見て、目当てのラクダの絨毯を頼む。一瞬、かの店員氏「なぜ」という顔をしている。多分、日本人観光客はウールを買うと思っていたのではないだろうか。フィリアさんの合図で定価の40%になった。円かドル払いなら、まだ値引きするという。商談成立後ほトルココーヒーのもてなしが続いた。
トルコ料理
旅の最大の楽しみは、その地方の人と接し、その地方の料理を堪能することではないだろうか。トルコ滞在中何度か、「世界三大料理」にフランス、中国料理と並んでトルコ料理があると教えられた。確かにトルコ料理は日本人の筆者にも美味で、その料理の”深み”はスパイスにあるようだ。ディルやハーブもふんだんに使われており、さすが食料自給率100%の国だけあって農作物は新鮮そのものである。しかしスパイスやハーブに関していえば、かつてオスマントルコ時代に世界中から集めてきたことに由来しているようである。
トルコ人の99%はイスラム教徒だから豚肉は使わず、肉は羊・牛・鳥で一般的には羊料理が多い。串焼きにしたシシ・ケバブ、薄切り肉の回転焼きのドネル・ケバブは日本でもよく知られている。ほかに羊肉のトマトソース煮、ひき肉のキヨフテ等もなかなかのものだ。スパイスの使い方で臭みはほとんど感じられない。牛肉や鶏肉は少し贅沢をしたい時の料理ということになる。
トルコ人は魚はあまり食べないので、魚レストランは少なく、イスタンブールではガラタ橋近くや旧市街の漁港のあるクンカプ地区でおいしい魚介類が食べられる。魚はほとんどがムニエルか揚げ物であるが、ショーケースの中から自分で魚を選び、好きな料理法で注文できることは嬉しい。時には相手が日本人だとわかると塩焼きや刺身を作ってくれるレストランもある。パンはほとんどレストラン横のパン工房で焼いて熱々を出してくれる。加えて、「一日はチャイで暮れる」というトルコの紅茶はまた格別である。