聖書の周辺世界を旅する(7)

キャラバンサライ

 我々一行10名は、首都アンカラ郊外のエセンボア国際空港からバスをチャーターしてアンカラへ向かうことになった。途中、通訳兼ガイドのフェーリアさんが「ちょっと寄って行きましょう。」と言って案内してくれたのが、キャラバンサライを目のあたりに見る最初であった。
 キャラバンサライは、11世紀この地の覇者であったセルジュクトルコ時代に、その首都コンヤ(アンカラの270Km南)からシルクロード沿いに建てられた。200年続いた後、オスマントルコに受け継がれ、近代輸送の手段が整うまで数百年に渡ってラクダを率いて旅する商人たちの力強い味方であった。
 スルタンハーンにあり、1229年にセルジュク時代のカイクパート1世の残したものが有名であるが、門を入ると中庭の中央に小モスクがあり、2階に15部屋くらいの宿があるのがキャラバンサライに共通している。
 我々が見たのは比較的小さいオスマン時代のものであった。旅商人の寝室、壁まですすで真っ黒になった炊事場、小さな窓がある丸天井、今でもきつい臭いのするラクダなどの家畜小屋などは往事を偲ばせる。当時、国益を考えて商人は3泊まで滞在が可能であり、もし商人が旅の途中で病気になった場合は回復するまで面倒を見てくれる所でもあった。また、キャラバンサライの近くに墓地があるところから察すると宿で死んだ旅人を葬ることもしたのであろう。滞在費を初め、諸費用は無料であったというのだから、いかに国益とはいえ、トルコ民族の寛大さを知らされたような気がするのである。この隊商宿からあまり遠くないところに現代の国道が走っている。

朝食

 素晴らしい眺めのホテルの屋上で摂る朝食や、紺碧の空の下大きな木の下にしつらえられたテーブルで摂る朝食などは素晴らしい。
 トルコでもホテル側はいろいろ工夫して客をもてなしてくれる。朝食はカフヴァルトゥ、ついでに昼食はオーレ・イェメイという。何も言わずにいると外国人には西洋スタイルの朝食が出される。ほとんど例外なくパン、チーズ、ゆでたまご、ジャム、オリーヴ、トマトにコーヒーである。しかしトルコは食料自給率100パーセントの国。輸入はしない。果物、野菜はこの国が誇る大地と太陽の恵。味わうことは朝食から始めようとばかりブレックファストではなく、カフヴァルトゥをオーダーする。ビデ(薄くて丸いパン。中は袋状。この国ではピザもビデと言う)、何種類かの焼きたてパン、自家製のオリーヴにジャム、メネメン(卵、チーズ、ピーマン、しし唐に似た青唐辛子、トマト等く混ぜた炒り卵)、果物のバスケット、アイラン(ヨーグルトドリンク)、チャイ、人参、ズッキーニ、トマト、キュウリ、玉ねぎ、ナス、白豆のサラダ等々。サラダはヨーグルト(トルコ語ではヨールト)をかけて食べる。チーズは普通白チーズであり、山羊の乳から作られ独特の酸味がある。ヨーグルトも原料は山羊の乳だ。白チーズは生で食べるが、ヨーグルトはもっぱら調理用にする。
 朝食は公園などのカフェでトルコ人の間で食べるのもまた格別である。