キリスト教あれこれ(8)

カーニバル

 テレビのニュースは、今年もブラジルのリオ・デ・ジャネイロでカーバルが始められた旨、強烈なサンバのリズムと共 に報じた。カーニバルは「謝肉祭」「ばか騒ぎ」などと訳されているが、カルネム・レウアーレ(肉をやめる)とかカルネ・ウアーレ(肉よ、さらば)というラテン語から転化したものである。 この謝肉祭と訳されるカーニバルは、リオに限らずカトリック教国に多い風習でプロテスタントの国々ではほとんど行われていない。リオの他に有名なのは南仏のニース、イタリアのフィレンツェ、ドイツのケルン、スイスのバーゼル、米国のニューオーリンズなどのカーニバルで、全てカトリックの盛んな地方である。
 カーニバルはキリスト教の教会暦のレント(四旬節・受難節とも呼ぶ。それは「灰の水曜日・今年は2月14日」から始まり復活祭の前日までの日曜日を除く40日を指す)の始まる3、4日から 1週間前の期間である。もっともフランスでは「灰の水曜日」の前日を「懺悔の火曜日(マルディ・グラ)」と呼ぶところからフランスの影響の強かったニューオーリンズではカーニバルという語を使わずに「マルディ・グラ」と呼んでいる。またドイツ語圏ではレントのことを「ファステンツアイト・断食の期間」と言いカーニバルを「ファスナハト・断食の前夜」と呼んで祭りをする習慣がある。
 いずれにしてもレントの期間中は肉も(代わりに魚を食す)、酒も、人々の祝い事も一切を断っのが慣わしであった。彼らが肉食、しかも40日も断つことは彼らの食習慣からして大変なことであった。カーニバルは、本来カトリック教会行事のレントの曲解または反動から発し、それにヨーロッパにあった「悪魔払い」や農村部の春を迎える「豊作の祈り」が加わったものであった。カトリックでは「主の行事」であるにもかかわらず、ローマ教皇庁からはそれに対する一貫した見解はついに示されなかった。ある教皇は反対し、一方、ある教皇は15世紀にカーニバルに補助金を出したという記録が残されていることからもそのことは明らかである。しかし、今ではカーニバルは宗教的意義を失い、肉を食し、酒を飲み、ばか騒きをする祭りとなってしまった。
 本来、レントは、イエス・キリストが私たちのために「十字架を担ってくださった」ことを覚え、私たちの罪を悔い改めると共に私たちもまた隣人のために重荷を担うということに思いを寄せて過ごす期間であって、断食とか肉食を断つのはその目標のための一手段に過ぎないのである。レントは「灰の水曜日」から始まると前述したが、「荒布をまとい、頭から灰をかぶる」ことは古い時代から悔い改めや深い嘆きのしるしとして行ってきた。
 教会は今、悔い改めの期間の只中にある。そしてそれは受難週(今年は3月24日~ 30日)特に受難日(キリストが十字架についたのを記念する日、今年は3月29日)はその中心となる。